汝、風を斬れ

 三人は、遅めの朝食を摂った。
「うっめぇ」
 とガツガツと食べるはセント。
「セント、お前、嫌いなものってないだろ」
「おう!」

 ジンの問いに、子供のように答える。あまりにもおいしそうに食べるので、作った本人も嬉しくなってしまう。ジンは笑みのまま視線を隣へ移すと、きれいにソルド豆だけを残して姫の皿。

「姫。子供ではないのですから……」
「だってジン、こんなの食べられない」
 口を尖らせて、豆をつつく。
「だめです。ソルド豆は栄養豊富なんですよ」
「わかっているわ。でも……」
 向かいで二人のやり取りを見ていたセントは、急に真顔になって言った。
「姫様、ソルドはいろいろな気候に対応して、どこでも育つことができるんです」
「知っています」
「わかっているなら、食べなさい」
 強い語勢だ。姫にそんな調子に言うのは、彼女の家族ぐらいだ。一介の兵士が言えるものではない。
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