汝、風を斬れ


「ごちそうさま」
 顔を上げる。真正面に、姫の笑顔がある。
「食べました。全部」
 額に、似合わない、青筋が浮かんでいる。セントは笑顔でさらりと言った。
「豆だけで食べるから、気になるんですよ」
 ジンがしきりに首を縦に振る。

 森に沿ってヴァーンの街を歩いて日が暮れた。三人は、セントの故郷だというジアロに向かっている。
「で、明日は」
 布で仕切られた向こう側からジンの声がする。自分に宛がわれた間から、姫はそっと様子を窺う。
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