汝、風を斬れ
「俺の家に寄って良いか?」
「家?」
「俺はジアロの生まれなんだよ。ちょっと、やりたいことがあって」
「私はセントの後をついてきただけだ。何も……」
 二人が何か喋る度に、灯りが揺れた。ふと、言葉が切れた。
「今朝は、すまなかった……」
 ジンがうなだれる。闇の色の髪が、首筋を流れた。セントは苦笑して視線を流す。
「あ、姫様」
 ジンも振り向いてそちらを見る。
「どうしました?」

 姫ははっと我に返る。
 柔らかな小さな明かりと、その向こうの二人に見とれていた。なんだか恥ずかしくなってしまう。
「いえ……私、寝ますね。お休みなさい」
「お休みなさい」
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