汝、風を斬れ
 軽くて温かい毛布に包まって、意識的に目を閉じる。今さっき見た光景が蘇える。
 十二年も共に生活してきたジンと、昨日会ったばかりのセント。
 いつもそばにいてくれたひと。
 いままでであったどのひとともちがうひと。

 そんなことを考えながら、瞼は自然に重くなる。今日はいろいろなことがあった。明日もたくさん歩くのだろう。
やがて、深い眠りにつく。

 虫が鳴いている。

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