汝、風を斬れ
その男のそばに、敵兵が一人立っていました。男が死んでいくのを見ていました。そこを別の兵士が斬り掛かりましたが、敵兵はその兵士を一太刀に斬り倒しました。敵兵は若い兵士で、長靴もズボンも返り血や地面から吸い上げた血で真っ赤に染まっていました。太い刀にも血がたくさん付いていました。
やがて夜が明けました。どす黒い血の海に浮かぶ男は、すっかり冷たく固くなっていました。若い兵士は恐ろしくなりました。人を斬り殺すのが怖くなりました。
……そいつは、輝く緑色の髪と森の奥の色の目をしていて、名前は『セント』。年は十七……」
自分の血、相手の血、味方の血、敵の血。
自分の刀はたくさんの物を奪う。命や家族や色んな感情を……。