汝、風を斬れ

 再び、月が雲に隠れた。
 にわかに風向きが変わった。

「セント!」
「ああ、俺はお前より耳も良い」
 耳を澄ますと、少しずつ足音が近くなっているのがわかる。およそ十人。軽装なのだろう、金属の音はしない。

「そこ、守ってろよ」
 セントとの会話が途切れた。
 敵は存外に近い。

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