汝、風を斬れ


「ジン、誰か来るわ」
 顔をしかめて言う姫に、ジンは答える。
「セントです。それと……」

 セントが天幕に入ってきた。そちらを向いた、ジンと姫の顔が強張る。
 髪だけがいつもと同じように輝いている。

「あいつら……」
 腕の中の女性をそっと降ろしながら言った。かなり声が低く、暗い。
 上着を脱いで女性にかけてやる。その時にやっと気付いた。
 体中が血まみれだった。


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