汝、風を斬れ
がさがさがさ。
「セントぉ……」
このあまり肝の据わっていない男は、恐々義弟の名を呼んだ。するといきなり、ぐい、と腕を掴まれ、引かれた。
「ひ……っ」
冷や汗もほどほどに治まったところで、そおっと目を開けると、そこには笑顔の妻がいた。
「サ……サラぁ」
ぎゅっと抱きしめる。そして、おいおいと泣き出した。
サラは困ったような顔をしながらも抱き返し、セントは二人のそばで、そのよく通る声を抑えて、そして笑って言った。
「こんな女々しい奴に、姉貴は任せらんねぇな」