汝、風を斬れ
「大きさは私のもので大丈夫、そうですね」
旅装束に着替えたセントとジンが見た人は、群青色の髪を肩にかかる長さで切りそろえた、十七歳の少女だった。
「姫様、お裁縫は」
「得意です」
サラと「彼女」はすっかり打ち解けたらしく、一見仲のよい姉妹のようだ。二人とも、この国の一般的な服に身を包んでいる。
セントは荷物の点検を終え、ジンと姫を近くに呼んで言った。
「何度も言うけど、今、姫様に髪を染めてもらったのは、王族の証である淡青色の髪を隠すため。髪を切ってもらったのは、あなたがあなたであることを隠すため。いいですね」
姫は、コクと頷く。きったばかりの毛先が痛い。