汝、風を斬れ
「キュア……」
セントが少女の名前を口にする。キュア、愛に満ちた、という古代セリス語。
「しかし、我々臣下が貴女の名前をそうも呼んでいいのでしょうか」
ジンは尋ねる。
「はい」
しっかりとキュアは頷いた。
「それなら、お互いに敬語も止めたほうがいい。俺とジンが……年下の女の子に敬語使うのも変だろ。まあ、キュアはともかく、俺は敬語やめるからな、ジン」
セントが、にかっと笑った。
「では、お世話になりました」
ジンがニコイとサラに頭を下げる。キュアも二人に挨拶をした。
「くれぐれも気をつけて」
ニコイが言う。ジンは重ねて礼を言い、キュアを促す。セントは少し離れて待っている。照れ臭いらしい。
「お二人も、どうかご無事で」
キュアは最後にサラのふくらんだ腹を見た。そして歩き出す。