汝、風を斬れ
「異母姉弟なの?」
キュアがセントに問う。
時分は昼、市場の近く、食事の後。もう五日歩けば隣国だ。
「そんなに大きな声で聞くことではないよ、ひ……キュア」
割ってジンが諭す。しかし彼女を名前で呼ぶことへの抵抗が伺えて、セントが笑う。
屋台のおばちゃんに食器を返し、三人は再び歩き出す。
「姉貴を産んですぐ、姉貴の母親は亡くなった。その後、親父は魔術の師匠んとこの娘と結んで、俺が生まれた。母さんは姉貴もかわいがってたし、術も教えてた。……母さん、十年前くらいに消えたんだけどさ。今はどこにいるんだか」
そんな軽々しくするような話ではない。しかし、怖いもの見たさというのが人の性。
「お父様は?」
キュアは問う。
「大戦の後、行方がわからない。強い人だから死んではいないと思うけど」
あっさりと言うが、中身は濃い。
「誰もが認める幸せな家族なんて、そうはいないさ……」
言った後、セントはジンに睨まれる。目で促され、気付く。
キュアの肩が落ちている。
お父様、お兄様、……お母様。