汝、風を斬れ


 しばらく無言の時が過ぎ、キュアがいきなり顔を上げた。
「……セント、もしかしてあなたのお父様って、ヴェルズ・ソーザ将軍?」
「はい……てか、気づかなかった?」
 キュアははっとジンのほうを向く。ジンは目を丸くして
「気付いていなかった……のですか?」

 もぉ、とキュアは頬をふくらませ、早足で先へ行く。しかし二人のほうが歩幅が広い。苦笑いをしながら後を追う。

 
 それから二日経った。
 夜、旅館の部屋には人数分の寝具があるが、ベッドに入っているのはキュアだけだ。ジンはその傍の長椅子で、セントは入り口の脇で、それぞれすぐにでも戦えるような格好で休む。旅館の近くに沢があるらしい。静寂の中に流水音が続く。
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