汝、風を斬れ
近寄っては退き、ぶつかっては引き。
「強い」
鋭く、速く、重い。その一つ一つの衝撃の度にジンは感じる。何とか受け止めることは出来るが、防戦一方だ。どうする。
「な……?」
ジンは一瞬戸惑う。突如セントが、倒れた。
刀をナイフに持ち替え、ジンはセントに近づく。彼の愛刀を遠ざける。
うつ伏せの体形のセント。動く様子はない。
肩の力を抜く。ゆっくりと息を吐いた。水の音が戻る。
「ジン!!」
キュアがベッドから出て、ジンに抱きつく。
「姫」
ジンはそっとその髪を撫でる。細くて、柔らかく、真っ直ぐな髪を。
「起こしてしまいましたね。すみません、お休み中に……」
言いながら自分の肩が濡れているのを感じる。キュアの涙だ。細かく震える肩。声にならない嗚咽。
この少女を守らなくてはならない。そのために、捨てたのだ。
「……ジン」
呼ばれてジンはものすごい勢いで振り返る。
……セント。