汝、風を斬れ
 目にはいつもの光が戻り、その口調もしっかりしている。
「すまない」
 ジンとキュアに対峙して、セントは真っ先に謝った。そして何を思ったか、上半身裸になった。キュアが慌てて眼を背けたが「見てください」とジンが言う。セントが説明しようとしていることを察した。

「俺の体は、色んなまじないやら何やらで大抵の毒が効かない。病気も、怪我もさっさと治る体になっているんだ」
 過保護だよな、と自嘲して、これが止血、これが体温を守る、など一つ一つの陣を説明していく。はっきりと図の見えるもの、目には見えないもの。

「でもここ――」
 左手で頚動脈の上を指す。
「ここから入ったのだけは、効いちまうんだ」
 キュアが恐る恐る尋ねる。

「入った毒は…?」
「「洗脳剤」」
 ジンとセント、声が重なる。
「洗脳剤?」
 オウム返しに尋ねると、答えは隣から返ってきた。

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