汝、風を斬れ
考え込んでしまったための沈黙を、キュアが破る。
「セント、どうしてこの前よりも、その……あなたに戻るのが早いの?」
即ち自律行動が可能となるまでの時間が。
答える。
「術で俺の中身を外に出すんだ」
「中身?」
「精神、みたいなもん。ただ、出入りが自由に出来る訳じゃないから、結果、恐い思いをさせてしまった。俺の力不足だ。ごめん」
下げた眉の下にある深い色をした瞳が、真っ直ぐに射抜く。頬の火照りを知られないように、キュアは「いいの」と首を振った。
キュアは夢を見た。
城の外れにある、レンガ造りの小屋。
幼い自分が、そこへ入る。
「ロビン」
「姫様、こんにちは」
そこにいたのは、鉄色の髪のメガネの男。
「なにをしているの?」
「お薬を作っているんです」
「どんなおくすり?」
「みんなの心が一つになるお薬ですよ」
――洗脳剤。