汝、風を斬れ

「俺とジンが一緒ってことまで向こうはわかってんだ。反乱軍はあのビラも配って回っている。国境だってどうなってんのか……とにかく、三人は危ない。伝声機で連絡はとる。俺は一人で城に入る。中から潰せるものがあるかもしれない。だから……」
 セントの言葉が途切れる。ジンが、しゃがみこんでしまったキュアの肩を優しく抱く。
「姫……」

「……たじゃない」
 キュアは掠れてしまった声で言う。

「守るって言ったじゃない……」
 顔を上げる。ジンの手を柔らかく払う。湖の底の色の目に涙を浮かべて、セントを真っ直ぐ見つめ、もう一度。
「あなた、護るって言ったじゃない、私のこと……」

 一番初めの森の中。初めて会うのに、あんなに信頼できる背中。深い深い瞳。

「あなたは、俺が護ります」

 その低く優しいきれいな声で。

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