汝、風を斬れ
ルース、年は十五。
真っ黒な瞳に赤土色の髪をした、年の割に少し背の低い少年だ。大戦後、多くの戦災孤児が発生し、王政府は孤児院を造ることを決定した。建設の間、子供達はいくつかの仮住まいへ分けられた。その一つが、城の隣、兵舎の広大な芝生の土地に建てられた大きな天幕であった。ルースはそこに来た一人である。
子供の世話をしたのは兵士だった。多くは片方の腕が失かったり、足が途中から失かったりする大人。あとは交代で来る、手足のちゃんとある大人。そして、子供達に割と年が近かった兵士、例えばセント。
兵士は慣れないながらも、懸命に子供達の世話をした。自分の子供、或は孫のように可愛がった。戦争という国が行った事ではあったが、自分達がしたことは人殺しであるという自覚は兵士の心に根深くあった。私は、多くの子供達の親を死なせてしまった、と。
子供達もそれとなく察していた。故に、僅かに血の臭いの漂う大人達を受け入れた。