汝、風を斬れ
「例えば、の話さ。それで誰かが言ったんだ、王族を守れ、と」
「それでセント兄は」
「俺は姫様の所へ向かった。王様、女王様の所と、王子の所にも何人か走って行ったが……」
 その先はルースも知っている。女王様は兵士の誤りによって落命し、王と王子は捉えられたのだ。

「お姫様を守ったの?」
「今は内緒だよ」
 ルースは聞いてはいけないのだとセントの表情から悟る。

「……でもね」

 言葉が幼いのは、施設で相手をするのが幼い子供が多いから。
「兵隊さん達が国を動かしたら……どうなるんだろう、僕たち。今の王様は?」
 そう、この反乱、目的がわからない。何が不満なんだ。

 ルースのことも気にかかるが、城へ向かうことを先決とする。ルースは「どうにかなるよ」としっかりした顔で言った。そして「セント兄はどうするの?」と聞いてきた。

「俺はハートリックニア城へ向かう。何か探って、反乱軍の上部と掛け合って、終わらせられるなら終わらせる。だめなら斬り崩す。なに、そんな顔すんなよ。大丈夫、俺はセント・ソーザ。ヴェルズ将軍の息子だぜ?」
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