汝、風を斬れ
「どうして?」
「あんな人間に私はどこかで憧れていました……強くて頭が良く、話していて気持ちの良い……」
「あなたもそうよ」

「ありがとうございます、でも」
「でも?」
「セントとは人間としての大きさが違う」

「どういうこと?」
「セントは、本当に色々なことを経験している……兵士としての命の遣り取りもたくさん……キュア、一度怒られたことがありますね、ソルド豆のことで」
「うん」
「あの時は本当に……すごい奴だと思った。実体験としてわかっていなければ、あなたに対してあんなことは言えない。それにあの時の目……」

 威厳のある目、とは正にあれで。
「古代の王のような目をしていた……」
 ジンは眩しい物を見るような目をした。それを見て、ふふふ、とキュアが笑う。

「どうしましたか」
「ううん」
 ジンが自分をどう思っているかなど、あまり問題ではなかった。ジンがセントをどう思っているのか。自分の思う人を、自分をよく知る人は好意の目で見ている。それを知ることができたのは、キュアの大きな支えになった。
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