汝、風を斬れ
「それよりも」
 頭を垂れて。
「申し訳ございませんでした」
「仕方がないわ、ねえジン。もう、顔を上げて?」
「できません。あなたはこの国の姫、私はその近衛なのに……私は……」

「ジン」
 こんなジンを初めて見た。私はどうしたらいいんだろう。
「お願い、自分を責めないで。あなたが不安だと、私も怖いの」

 ジンの、固く握りしめた拳をそっと手で包む。
 ジンは顔を上げる。
「ね?」
「……はい」
 日が出る。ごみごみした町も光で溢れる。

「ディードレール」

 ジンの体がびくんと反応する。
「返事がないな、貴様、王女付けの近衛であるからと思い上がるな」
 逃げ場はない。後ろを向くと、装飾の多い白い制服、伝声機、腰に吊った刀。兵士。
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