汝、風を斬れ
 ジンはキュアの手を握った。キュアはジンを見つめる。
「私がどこまでもお護り致します」

 そうね、ジン。何か行動を起こさなくてはいけないわ。

 キュアはジンの蒼天の瞳を見据えてしっかりと頷いた。手を放して、立ち上がる。その兵士の方へ向かう。ジンがその後に続く。 

「私は、ここにいるわ。この国の王女、キュア・コーカス・デイリア・セリスです。確認なさい」
「確認するまでも。縄を、失礼致します」
「縄なんていらないわ。私はもう逃げない」
「しかし」
「結構よ」
 言い放つ。

「……はい」
「あなた、名前は」
「ラスフ・ドレドと申します」
「ではラスフ、私はこれから何処へ行くのかしら」
「ハートリックニア城の地下牢です」
「そう……わかりました。もちろん、この私の近衛も共に、ですね」
「それは……」

「良いですね」
「はい」
 ジンは何も喋らなかったが、心の中ではキュアにこれ以上ない賞賛の拍手を送っていた。
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