汝、風を斬れ
雨具を、しとしとと降る雨が滑ってゆく。朝は日が差したのに。
キュアとジンの乗った二頭の馬を囲んで、反乱兵の一軍は王城へ続く道を進む。道の両端に立って、或いは家屋の窓から人々はその一行を見ている。誰も、何も言わない。多くの馬の蹄の音と、雨がしとしとと降る音ばかり。
キュアにとっては、王女として国民の前に姿を見せる最初の機会である。慣れない馬に揺られながら、ゆっくりと視線は左右に振る。しばしば民と目が合う。民は、多くの鎧に囲まれた自分を見ているのだ。目が合った者には、王女として優しく微笑みかけてやる。するとその者は周りに悟られないようにお辞儀をする。どのような気持ちでいるのか、思案を巡らせても気休めに過ぎない。