汝、風を斬れ
 長さこそ違うが、そのゆるくうねる銀髪は母親のそれであった。十年前に突然消えた、魔法使いの、優しくて聡明な母。両の手は鎖で繋がれている。おそらく強い魔法が掛けられているだろう。同じ物が首飾りのように首にもあった。
「どうして城に……十年間何を……その鎖は……」
「セントこそ……」
 母親は、目の据わらない息子の姿を見て懐かしそうに微笑んだ。
「大きくなったわね、セント……」

 セントは事情を話し、母親は、知る限りの全てを語った。セントはその全てを聞いた。
「……ふざけるな」
 何のために、俺は今まで……。
 廊下を駆ける。鍵は母親に方法を教わって開けた。謁見の間、そこにこの反乱の総司令者がいる。


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