汝、風を斬れ

 王女を捕らえた一行は城に到着した。途中の町に城への移動魔法が設置してあり、馬を下りたラスフと何人かの兵、キュアとジンがその中に入ると、魔法使いが詠唱を始めた。気が付くと城の前の大通りで、魔法に体力を奪われたキュアをジンが支えて立たせた。一行はそのまま西の門へ回り、地下牢へと続く薄暗い階段を降りて行く。数人の足音が石の壁に反響する。

「ここです」
 ラスフは鉄格子の重い扉を開けた。
「どうぞ」
 二人は中へ。ガシャン、と大きな音を立てて扉が閉まった。鍵が掛かる。

 高いところに窓があり、そこから漏れてくる光は僅かだ。ラスフ達が手に手に明かりを持っていたので、この暗さに目が慣れるには多少時間がかかった。
「姫……?」
 ジンはキュアに問う。一点を見たまま動かない。
 奥に何かいる。さらに目が冴えてくると、それが何だかわかった。

「……セント」
 動かない。キュアの顔が青ざめる。
「セン……」
 ジンが安堵や呆れの混ざったため息をついた。キュアは取り敢えず安心して肩の力を落とした。

 セントは寝ている。
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