汝、風を斬れ
額に、流血の跡が乾燥して残っている。セントは目を覚まして二人を確認し、それから視線を外した。
「俺は何日眠ってたんだ?」
と呟き、説明を加えようとしたキュアを眼で制し、襟を正す。時刻のせいか、窓から入る光はセントだけを照らす。
「俺が、城に入ってわかったことを、喋ります」
この牢の扉は鍵と魔法で施錠してある。開かれることは絶対にないという自信からか、見張りはいない。
キュアもジンも光に包まれたセントの姿を見る。
「二人は聞いたことがあるかもわからないけど、」
セントはやっと視線を上げた。
「裏王家を、知らないか?」
キュアとジンは首を横に振った。セントは二人の瞳をじっと見つめ、それから言葉を選ぶようにゆっくりと、しかし淡々と語り出した。