大切なもの。
長い坂の上にある
小野原中学校。
坂にはたくさんの桜の木が
植えてあって、この季節は
満開ですごく綺麗だ。
(そういえば三年前も
こんな感じやったなあ〜…)
桜を見上げてそう思った。
桜の間から見える、青い空が
眩しい。
『三年間長かったよね〜。』
『長かった〜!入学の時も
桜、満開だったよね。』
『覚えてる?有紗さあ、
桜の枝折って初対面の
あたしに怒られたんだよ!』
腰に手をあてて話す実咲。
『あ〜…あの時はすっごく
うざかったなあ。』
『あははっ。有紗すっごい
ふてくされてたもん。』
三年前の入学式のとき。
あんまりにも桜が綺麗
だったから、枝ごと
折っちゃったんだ。
それを、たまたま実咲に
見られてて…
「なにやってんの!!」
「え?」
「その枝!!折っちゃダメ
じゃんか。」
綺麗だったからつい
折っちゃっただけなのに…
「はいはーい。
ごめんなさーい。」
「……………。」
適当な謝り方にうんざり
したのか、そのまま何も
言わず行ってしまった実咲。
(何あの子………。)
よく分からず去っていく
背中を見た。
そして、手にした桜の枝を見た。
「……ごめんね。」
あたしは、桜の枝に謝った。
(あの子にもちゃんと
謝らないと…)
これが有紗と実咲の
出会いだった。
それから入学式が始まって
クラス発表があり、
部活動体験にいった先で…
「あっ…。」
「あ、朝の…。」
まさか同じ柔道部だったなんて。