小さな恋の話
あたしたちイツメンは
すぐさま
不良グループに
湯浅君のリンチをやめるように言った
花田のことは言わなかった
助ける義理もなければ
価値もないと思ったから
それにあたしも
花田の作り笑いが嫌いだった
次の日
花田と男子1名は
普通に登校した
2人はなにごともなかったように
他の男子とも話している
あたしは正直
がっかりした
少しは悲しげにしてたら
同情してやったのに
1週間後
ある女の子がすべてを告白した
不良グループが校内の
備品を壊して回っていること
煙草や酒を飲んでいたこと
そして2人の男子生徒の暴行被害
不良グループは全員
停学になった
しばらくして
あたしはその女の子に
なぜ危険を冒してまで
先生に言ったのかきいた
自分がちくったのがばれたら
きっと次のターゲットは自分だろう
そのくらいわかるはずなのに
すると女の子は
花田を呼び出した
女の子は花田に耳打ちすると
花田はワイシャツの裾を
みぞおちの部分まであげた
あたしは
目を見張った
そこには
1週間以上たった
いまも赤黒い痣が
痛々しく残っていた
花田はこれだけやられても
指一本手を出さなかったらしい
「ちょっとでも手をだしたら負けだから。お前らは何人でも俺1人で勝つんだって見せつけてやった」
そう言って笑う
花田の笑顔は
もう以前のような上辺ではなかった
あたしは
花田のちっさい
頭をくしゃくしゃに撫でた