君を抱きしめるから~光、たずさえて~






「ああ、その変な前開きの服、やっぱり、やっぱり! おまえだったんだ!」
  


 奴の驚きよう。


 いやこれはただの着物だよ。



「それがなされるがまま、ついてきた理由か」



 宴席はすでに整っている。


 だが、ボクは困っている。
 

 ボクら二人とも酒宴なんて……酒、飲めないからな。


 かといって宴と聞いて酒を期待しない縁者はいない。


 本家は五十畳程度の畳の部屋に座布団が人数分、敷かれていた。



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