君を抱きしめるから~光、たずさえて~




 食事はいつもより豪勢な程度だが、ボクには贅沢すぎた。


 なめこ汁と季節の炊き込みごはんがあれば幸せなんだ。


 ハンバーグなんていらない。


 ミートボールだって弁当に入っていたらラッキー、ぐらいの思い入れしかない。


 こんな人数分の鮎なんてどこで釣ってきた。


 いや、仕入れてきたんだ……


 どうせおじさんあたりがろくでもない『力』行使したんだろうけど。


 ほんっとうに中途半端。


 まあ、精一杯都合してくれたんだろうな。


 鮎の鯖(?)読んで。


 彼はきっとどこでも生きてゆけるんだろう。


 こんな風に体面を気にして。


 ひっそり田舎に住んで、家庭菜園でもしてれば、そんなこと、しなくてすんだはずなのに。



「ジュースで良い? お客なのに失礼だけど」



「俺は酒は好きじゃない。気にすんな。久々にまともなものが食べられて、俺は運が良い」



< 112 / 164 >

この作品をシェア

pagetop