君を抱きしめるから~光、たずさえて~
そんなことになんのメリットもないじゃないか。
いや……『力』のことに疎いまま婿入りしてきた父がその苦労を知らないワケはない。
彼は生きているじゃないか。
母さんと結婚したとき、なにがしかの相談はしてたらしいけれど、それがのりおをどうこうする内容じゃないことをどうか教え示してくれ!
「くそ!」
ボクはのりおを担ぎ上げて部屋を出ようとした。
がたっ!
窓際に月が明々(あかあか)と光を投じて、ボクのベッドの上あたりにぺたり、と手のひらが付かれた。
そしてすーっと横に窓をスライドさせるとぞろりと長い髪の毛を引きずって這い上がってきた。