君を抱きしめるから~光、たずさえて~
ひとつ、頭をさげてボクは走り出した。
坂の上の門の前で、なっちゃんが小さく手をふって、腕時計を指さして、注意を促す。
あ、あと三分したら予鈴が鳴ってしまう。
でも走る気がしない。
のどが渇いているから。
坂の下に設置された自販機でポカリを二本、走る前と登り切った後のために買った。
ぐびり、ぐびり。
のどをならして。
これから走るのだ。あの急坂を……と思うと手の中のロボット人形が急にずっしり重く感じた。
「走るの? だったら日陰になってるところを行った方がいいよ。今日は熱中症出そうだから」
「ご教授ありがとうございます!」