君を抱きしめるから~光、たずさえて~




 確か、九十度まで腰を折ってこう言うのだ。


 なっちゃんの部活ではそうなんだってことだ。



「良い挨拶だねえ。でも俺、そんなガラじゃないし、緊張しなくて良いよ。礼儀とお作法?俺の人生スパルタ禁止だから。虚弱だし」



 うそだ。口に出しそうになって困った。


 絶対、そうは見えないんだ。


 本人、ああ仰るが、さわやかかどうかは別にして、本当はスポーツ少年なんじゃないの? 


 ジャージだし。



「お先に失礼いたします!」



 とりあえず、するべきことはやった。


 完遂したんだ、ボクは……



「おーい、遅刻だぞお」



 正門前からなっちゃんの声がした。


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