甘い瞳に囚われて。
王子、猫離れの機会ですよ。
――キスマーク事件から二週間…
ロサと馬鹿やって怒られ、
前より打ち解けたルイスとは友達に昇格して、
ゼジルは相変わらずに自信満々な振る舞いをして、私は振り回される日々を送っている。
充実した生活を送っている。
「――…誰が、振り回しているって?」
背後でボソリ、と呟く声に私の肩はビクッ!と動く。
後ろに体を向けず、私は目を限界にまで見開く。
『だれかな~?』
フシュ~♪フシュ~♪
と、吹けないくせに口笛の真似をしていると…
ヒタヒタ…、と近づいいてくる足音。
その音に私の体はすぐさま反応し、
頭にこの言葉が浮かんだ。
"逃げるべし"
私は、忠実に足を踏み出し床を蹴った。
だが、
「逃がさない」
グイッ!!と私の体は、温かいものに包まれた。
身動きが出来ない私は、今ヤツに後ろから覆い被さり抱きつかれている状態。
それは、わずか三秒の出来事だった。