甘い瞳に囚われて。
「殿下、お初にお目にかかります。タナー家リビーでございます」
リビーと名乗る女は、わざとらしい上目遣いで可愛らしくお辞儀をしている。
『あぁ…下がれ』
高貴な椅子に座り足を組み、さらに腕を組ながら冷たく見下ろすと、リビーは笑顔で下がった。
「もう50人目だが、今のリビーは良いんじゃないか?家柄も教養も…」
『…だが、欲深そうな女だ。見てみろ…俺の前との態度の違いを』
殿下が視線を向けた先には、先程、姫君らしく振りまっていた彼女がメイドを冷たく見下ろし靴を磨させていた。
『この国の女は、腹の奥に素性を隠す。その素性も腹黒い…』
「さすが…人を見分けることに才能がおありですね、殿下?」
横にいる男は、嫌みたらしく口角を上げる。
『お前に敬語を使われると虫酸が走る…普通に話せ、ルイス』
「本気で恋愛したことがないお前が本気で誰かに惚れる日なんて来るのかな…ゼジル?」
本気で惚れない…、違う。本気にさせる女がいないだけだ。
ほとんどの女は、この魔界の次期王である俺が欲しいだけだ。