甘い瞳に囚われて。
ガサッ…
茂みを分けて、近づいてくる影―…
「あれ…?ネズミだ」
女だった。
只でさえ、女に不信感を持つ俺は、かなりの警戒心を放していたであろう。
だが、この女は…
「あり?そんな警戒しなくても苛めないって…って、ケガしてるじゃない」
普通…女はネズミとかには触れないはずだが、この女は平気で俺に触れる。
「んー…酷いケガだよ、木から落ちたのかな?手当てしてあげるから家においで」
ネズミの姿である俺は、軽々と女の両手で持上げられて視線を合わされた。
黒い瞳――…
目の前には、この世界では持つ者は誰一人ともいない色。
異世界の者―…?
だが、女の瞳は綺麗で凛とした純粋なものに感じた。
「ふふっ…ネズミでも驚くのかな?私の瞳この世界じゃ珍しいんだって。だって私、この世界の人じゃないもん」