甘い瞳に囚われて。
「へぇ…魔界のネズミって、話せるんだ…」
感心をしつつ、まじまじと黒い瞳で俺を見つめてきた。
「その瞳も真っ黒な毛並みも綺麗だよね、なんか、魔界!って感じ」
アハハ、と笑うコイツを見てると心が温まる。
『お前の瞳の色も良いと思う』
「ありがとう。でもこの瞳は私だけだから、私を狙う人がいるんだって。私の世界じゃ、いっぱいいるのに」
『お前、人間なのだろう?なんで、ここにいるんだ?』
「んー…それを聞かれても分からないんだよねぇ、トイレに入ったつもりで扉を開けたらいつの間にかこの世界に来て、タナー家に売られたの」
『そっか…しかし、こんな扱い受けているのにも関わらず、ここから出ていきたくないのか?』
すると、シイカは優しく微笑み…
「そりゃあ、そうしたいけど…行くところないし、雇ってくれるだけで感謝しなきゃだし?」
『…ふぅん』
こんな風に辛く笑うシイカを俺は抱き締めたくなった。