甘い瞳に囚われて。
《椎華 Side》
―――…
ご主人様に許しを得て、世話することが出来て良かった。
名前は、"ゼジル"というらしい…なんとも、まぁ立派な名前だ。
魔界のネズミが喋るのはこの子だけみたい。
一緒に暮らしはじめて、2週間が経つ。
そろそろケガも完治する頃…だけど何故か離れがたい。
私が、リビー達に苛められて部屋に戻るとゼジルが「よしよし…」と、小さな手で私の頭を撫でて側にいてくれた。私も撫で返す、このやり取りが習慣となった。
なんか、その撫でる様子が可愛くて…優しさに飢えてた私にとって心地いい存在となっていた。
「シィ…大丈夫か?」
『大丈夫…それよりケガ完治してきたね…』
すると、ゼジルは小さな身体をビク…!と震わせた。
『…俺、』
俯いて話すゼジルに顔を寄せると、またもや…あの魔女の声が屋敷に響いた。