甘い瞳に囚われて。
《ゼジル Side》
部屋から出ていったシィの後ろ姿を名残惜しいように見つめた。
この数週間、当たり前のようにアイツの側にいた。
―そろそろケガも完治してきたね―
だからあの言葉を聞いた途端、怖くなった。
完治したら、離れなければならない。
このままネズミの姿も困る。ロサに解いてもらなければ…だが、
こんな姿でもいつの間にか側にいることが当たり前のように感じている。
居心地がいい存在、
一緒にいると楽しくなる。
そこら辺にいる女と違って、酷い扱いをされているにも関わらず…アイツは
絶対、人の前で泣かない。
一つ一つのことに前向きだ。
この世界では、アイツは一人。
だから、ほっておけないだけであって…
だけど、アイツの顔を思い出すだけで締め付けられるこの気持ちは何だろうか――…?