甘い瞳に囚われて。
舞踏会の会場である大広間の中心では、わずかなカップルが音楽に合わせて踊って楽しんでいるが…
壁際では、前で騒いでいるお嬢様方のエスコート役であろう男性方が暇そうにしていた。
むしろ…私同様、料理に夢中になっていた。
『落ちついて食べられないから、テラスに行こーっと』
すぐ側にある、開かれたおっきい窓ガラスを通り抜け、テラスに出た。
『魔界の料理って美味しすぎだなぁー、これじゃあ、探しに行けないよ』
バクバクと中の様子が見えるようにベランダの壁に寄りかかりながら食べていると、聞き覚えのある声が横からはいってきた。
「ネェちゃん、花より団子だな?」
私を"ネェちゃん"と呼ぶ人物…今日会ったばかりの"名無しの魔術士様"だった。