甘い瞳に囚われて。
薄暗い部屋に静かな足音が私の方に近づいてくるのがわかった。
『…誰?』
その声にピタリと動きを止めたが、ちょうどその人物の周りは薄暗く…表情が分からなかった。
「シイカ」
静かに私の名前を呼ぶ人物の声は、とろけるような甘く低い声だった。
『そうだけど…?』
何故、私の名を知っているのか…そう問いかける前に、その声に体は反応して頷くように答えてしまった。
神秘的で不思議な空気が漂い…だが、居心地が良いこの空間。
空は、雲が避けるように月の姿が現わす。
人間界とは違い、手を伸ばせば届くんではないかと思うくらいの大きな月の光が、この部屋にゆっくりと射し込んだ。
月の光が、部屋を照らすと同時にその人物の姿がゆっくりと下から現れてくる。
私は、言葉を発せずに…ただ、その様子を見つめていた。
とうとう、照らされた光が顔に達すると…、
「会いたかった」
この甘く感じさせられる魅惑な言葉と共に、
潤った綺麗なスカイブルーの瞳に私は…、
囚われた。