甘い瞳に囚われて。
《椎華 Side》
結局、初対面にも関わらず…王子様と居ると懐かしく感じ、打ち解けてしまった。
人は見かけで判断しちゃ駄目だな、と心から思った。
極上の美貌を持ち、甘いマスクなのに正体は…俺様、何様、王子様。
そんなことを学び大広間に戻ると、王子様直々にタナー家へ私を引き渡すよう説明していた。
ご主人様は、「はぁ?」というような目で静かに話を聞いていて、
その間、リビーは王子様の後ろにいる私に「何で、アンタなんかが…王子様の側にいるのよ」みたいな鋭い視線を突き刺してくる。
なんともまぁ…、居たたまれない気持ちでいっぱいだった。
でもこの人達から解放されると思うと、内心嬉しくてしょうがない。
あの奴隷のように過ごした日々、唯一癒してくれたゼジル(ネズミ)と出会えたことを一人で思い出ふけていた。
「シィ、行くぞ」
話をつけたのか、王子様は私の手を握り歩き出した。
確かにあの人たちから解放されるのは、嬉しいよ?だけど――…