甘い瞳に囚われて。




《椎華 Side》


結局、初対面にも関わらず…王子様と居ると懐かしく感じ、打ち解けてしまった。


人は見かけで判断しちゃ駄目だな、と心から思った。


極上の美貌を持ち、甘いマスクなのに正体は…俺様、何様、王子様。



そんなことを学び大広間に戻ると、王子様直々にタナー家へ私を引き渡すよう説明していた。



ご主人様は、「はぁ?」というような目で静かに話を聞いていて、



その間、リビーは王子様の後ろにいる私に「何で、アンタなんかが…王子様の側にいるのよ」みたいな鋭い視線を突き刺してくる。



なんともまぁ…、居たたまれない気持ちでいっぱいだった。


でもこの人達から解放されると思うと、内心嬉しくてしょうがない。



あの奴隷のように過ごした日々、唯一癒してくれたゼジル(ネズミ)と出会えたことを一人で思い出ふけていた。



「シィ、行くぞ」



話をつけたのか、王子様は私の手を握り歩き出した。



確かにあの人たちから解放されるのは、嬉しいよ?だけど――…






< 67 / 105 >

この作品をシェア

pagetop