甘い瞳に囚われて。
「やっと、お前を抱き締めることが出来た…」
ネズミの姿の時は、抱きしめられる側以前に手で持ち上げられていた。
抱きしめたいと思っても出来なかった、あの状況。
この俺と同じ真っ黒な髪、
長い睫毛で縁どられたアーモンド型な暗黒の瞳、
小柄だけど元気さが伝わる姿、
そして、自由奔放で気が強い…気まぐれな所は、まるで猫のような性格。
今、シィの全てを独占している。
小さい子のように大事なオモチャを抱き抱えている感覚。
それ以上の想いが自分にあったことに気づくのは、もう少し先…――
「こんなに面白いペット、手離さないよ。覚悟しろよ?シイカ」
口角を上げながら呟くように言い放した後、ゼジルもゆっくりと眠りについた。