甘い瞳に囚われて。




「やっと、お前を抱き締めることが出来た…」



ネズミの姿の時は、抱きしめられる側以前に手で持ち上げられていた。



抱きしめたいと思っても出来なかった、あの状況。



この俺と同じ真っ黒な髪、



長い睫毛で縁どられたアーモンド型な暗黒の瞳、



小柄だけど元気さが伝わる姿、



そして、自由奔放で気が強い…気まぐれな所は、まるで猫のような性格。



今、シィの全てを独占している。



小さい子のように大事なオモチャを抱き抱えている感覚。



それ以上の想いが自分にあったことに気づくのは、もう少し先…――









「こんなに面白いペット、手離さないよ。覚悟しろよ?シイカ」



口角を上げながら呟くように言い放した後、ゼジルもゆっくりと眠りについた。






< 81 / 105 >

この作品をシェア

pagetop