甘い瞳に囚われて。
王子が私に…?
ありえません。私は、ペットですよ?
しかも、王子から貰うなんてありえませんから!!
『ありえませんから』
私はズバリといい放つ。
「なんでだよ?」
『だって、私は人間界に戻れる術が見つかったら帰るし…王子が私に渡すなんて魔界が滅びてもないから』
両手を上げて「ナイナイ」と振る私にロサは、頬をかいた。
「(アイツは、ネェちゃんを人間界に戻すつもりはねぇだろうなー…)」
ゼジルの椎華に対する想いが、ただのペットのような愛情と勘違いしている今…その気持ちに気づく以前にゼジルは、椎華を手放すつもりはないくらいロサもルイスも分かっていた。
「(ネェちゃん、あの王子様からは逃げられないぜ?)」
『うきゃー!!冷たいっ~』
「ほれー、お前ももっとおっきくなれ」
花にあげていた水をロサは私に向けて庭園の中をグルグルとして追いかけていた。
『私は、花じゃないから!!どうせ、ちっこいケドさっ!!』
すっかり、ビチョビチョとなった私たちは夢中になっていて…いつの間にか回廊の中まで入っていたことに気づかなかった。