甘い瞳に囚われて。
庭園がある外と境になってる回廊は、もちろんビチョビチョになっていて…
夢中になって遊ぶ私たちに近づいてくる足音にも耳にはいらなかった。
どす黒いオーラを放つ人物の気配にも気づくわけがなく…
「楽しそうだな…?」
この甘く…その色気漂う声を聞いたら誰もが心を奪われるに違いないが…、底から出た低い声が含まれていたら話は別だ。
恐怖を感じた、と言っても良いだろう。
ピタリ、と固まったロサと私は…声がする方にギチギチ…と顔だけ動かした。
そこに居たのは、言うまでもない。
ニヤリと口角をあげて微笑みかける王子様だった。
王子は、微笑みかけているにも関わらず、私たちは微かに震え出す。
水をかぶったせいじゃない。
じゃあ、何かって?
それは…、
微笑みを浮かべる王子の瞳は、冷めていて怒りが込められていたからだ。