甘い瞳に囚われて。





ジッと、私を見つめていた王子は…ズカズカッ、と早歩きで私の方へ近づいてきた。



その表情は、言うまでもなく良いものじゃない。



なのに優雅な動きで近づいてくる王子に私は体が固まり…、ヤツが来るのを待っていた。



「――来い」



グイッと、力強く腕を捕まれたと思ったら…ふわり、と体が浮いた。



『ギャッ!!』



私の悲鳴に耳を傾けずに早歩きでその場を離れた。



今、まさに人生初のお姫様だっこをされている。



しかも…、本物の王子様に!!



力強く私を抱き締めるから、王子の胸に顔が当たるのは当然で…、


トクントクンと規則正しく動く王子の心音とは逆に私の心臓は異常なくらい活発に動いている。



『恥ずかしいからっ…!離せっ!!』



必死で抵抗する私に王子は無表情のまま、口を開いた。










「うるさい」



かなり、怒ってるっ!!



回廊をビチャビチャにしたのは悪いと思ってるよ?



だけど、そこまで怒らなくてもいいじゃんかっ!!





< 92 / 105 >

この作品をシェア

pagetop