~天に背いて~<~天に送る風~第二部>
そしてふと、あの剣(つるぎ)のことを考える。
なぜ、あのとき現れた?
まるで正義は我にありと言わんばかりの周囲の状況で、ひるみもせず猛々しかった宰相マグヌスの弟……何より彼が愛した存在を、断罪せよと命じるかのように。
「まさか……試したのか? 神はひとを赦せという。我々にそれができるかと、試されたのか?」
まるで神のような存在に、断罪の剣を握らされ、さあ、とばかりに飛び込んだ。あれは間違いだったのか?
「違う……ちがう。試されたのは……ボク独りなんだ……ボク独りだったんだ!」
そのまま彼女は悲鳴のようにアーッと声をあげて、くずおれた。
しかしすぐ立ち上がり、自分の部屋に飛び込んだ。そこにはサフィール王子の後ろ姿があった。