~天に背いて~<~天に送る風~第二部>
当然ながら唄うたいのまねごとなど、サフィールもさすがにやっていられない。
「これまでの経緯を話したかったのだが、どうやら直接会ってはくれそうになかったのでね。こちらから来た」
「何事かあったのですか?」
「それを話したかったんだ、親友である君に」
アレキサンドラは不意に気がついた。
このときのために、彼女が一番つらいこのときに備えて、彼は「誓約書」を書かせたのだと。
堅く絆を確かめて、ともに歩んでゆけるか?
と彼は試し、問うていたのだ。
なんて深い、慮り。
自分はなにもわかってはいなかった。
ただ息巻いていただけだ、と改めてアレキサンドラは思った。