~天に背いて~<~天に送る風~第二部>


「いや、森での借り物が。あの中にはベルがね?」

  叫びながらも 、反省はしない。地獄の住人としては当然だ。一旦、自分の非を認めたら、相手の奴隷とされても文句は言えない。

 しかし、謝罪に代わってベルだけは見つけて拾い上げて、しっかりと胸に抱えた。


「それだけでいいよ。ありがとう」


『ありがとうなんて言われたら、どうしたらいいのか……』


 心底弱り切ったようなようすのクリスチーネの心の迷いが、誠実さの芽から生まれたものだと、二人以外のだれが知っていたろう。


『こ、これは俺の役目だからな! 別に! 主の命だからって義理立てしているんじゃねーからな。使い終わったら森に返さなきゃならないんだから』
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