~天に背いて~<~天に送る風~第二部>


『俺は馬じゃねーつーの!』


「馬より役に立ってから言おうよ、そーゆーこと」


 ちなみにガマガエルじゃなくてウシガエルな、と、クリスチーネをつかみだしたサフィール自身が決着をつけてしまった。
 

 あははあっ、と地獄のドまんなかで笑い声が響いて、異質の物質に満たされた空間がゆがむ。

 亡者達、とくに地獄の種族は笑い声を苦手とする。
 
 失策だった。
 
 人間を食らう者もいれば、魂だけを狙う者もいる。

 彼らにとって人間など所詮、餌としか思えない。

 思う暇すらない。

 ただ、妄執に取り憑かれたように喰らい尽くすのみ。
 
 その人間が、である。
 
 さあ、食べよう。

 というときになって。
< 88 / 118 >

この作品をシェア

pagetop