~天に背いて~<~天に送る風~第二部>
もう、本当に悪いのはサフィール王子ただ一人のような顔をしている、女性ら二人。
「無様な」
アレキサンドラ自身、ため息をつきたいとばかりに呟いている。
『ちぇー、俺まで縛る意味あんのかよ』
そう言ってクリスチーネは、ちまっとした身体をもじもじと動かす。その目は何か意識している。
地獄の王者に逆らって命のあった者はない。
その恐怖、おそろしさ。
亡者ですら餌を得るためにしか滅多に城へ近寄ろうとしない。
燃える目。鋭い刃のような反りあがった鼻先に、毒液をしたたらせ獲物を仕留めようかという愉悦に浸る蛇の牙。
そのまがまがしさはウロボロス以上だった。いや、ウロボロスを従えるのに足る、王者の姿。